大麻取締法改正 続報2

一般社団法人日本ヘンプ協会(JIHA)から以下に添付する情報を入手しましたので報告いたします。

令和5年11月14日、衆議院本会議にて、大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案が賛成多数で可決され、衆議院を通過しました。提出された法律案は、以下のサイトでご覧になることができます。

大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案
https://www.mhlw.go.jp/stf/topics/bukyoku/soumu/houritu/212.html

(令和5年10月24日提出 厚労省ホームページより引用)

ご存知のように、大麻草を原料にした医薬品は欧米各国で承認され、難治性てんかんの治療目的などで使用されています。日本国内においては、現行法では大麻草から製造された医薬品は、大麻研究者免許を有する医師が適切な実施計画に基づき治験をすることは可能ですが、以下の大麻取締法・第四条による使用禁止規定があり、我が国の医療現場で使うことはできませんでした。

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大麻取締法・第四条(現行の法律)

何人も次に掲げる行為をしてはならない。

 大麻を輸入し、又は輸出すること(大麻研究者が、厚生労働大臣の許可を受けて、大麻を輸入し、又は輸出する場合を除く)。

 大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること。

 大麻から製造された医薬品の施用を受けること。

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改正案では、日本国内でも大麻草を原料にした医薬品の使用を認めるとしています。一方で、若者などの乱用を防ぐため、すでに禁止されている所持や譲渡などに加え、使用を禁止することも盛り込まれており、政府は今臨時国会での成立を目指しています。

上記の大枠はニュースなどで報道もされていますが、それに加え、THCの麻薬指定及び大麻草の部位規制削除により測定が必須となるTHCの許容残留値や、栽培の規制に関する改正の概要と趣旨など、そのポイントについて解説していきます。文字背景がグレー色の部分は、厚労省が作成した概要からそのまま引用したものとなります。

大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案の概要https://www.mhlw.go.jp/content/001159661.pdf
(令和5年10月24日提出 厚労省ホームページに掲載された概要より引用)

 

改正の趣旨
大麻草の医療や産業における適正な利用を図るとともに、その濫用による保健衛生上の危害の発生を防止するため、
大麻草から製造された医薬品の施用等を可能とするための規定の整備
大麻等の施用罪の適用等に係る規定の整備
大麻草の栽培に関する規制の見直しに係る規定の整備等の措置を講ずる。

改正の概要
1.大麻草から製造された医薬品の施用等を可能とするための規定の整備

【大麻取締法、麻薬及び向精神薬取締法】

○ 大麻から製造された医薬品の施用等を禁止する規定を削除するとともに、大麻等を麻向法における「麻薬」と位置づけることで、大麻草から製造された医薬品の施用等を可能とする。 

(※)「大麻等」:大麻及びその有害成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール:幻覚等の精神作用を示す麻薬として規制すべき成分)

「麻向法(まこうほう)」:麻薬及び向精神薬取締法 

「施用」:医薬品である麻薬を身体に投与・服用すること。 

【解説】

国際的にも大麻の医療上の有用性が認められていますが、現在の日本の法律では大麻由来の医薬品の製造、使用が禁止されています。日本でも大麻から製造された医薬品の施用を認める方向での諸整備を進めるために、今回の法改正となりました。

それと同時に、現行の大麻取締法にはCBDやTHCといった物質名は記載されていないため、「大麻草に含まれる天然のTHCは麻薬といえないのではないか?」との法解釈上の疑問点もありましたが、今回の法改正では大麻草に含まれている天然のTHC(麻薬指定物質)や他の危険薬物も麻薬と正式に定義し、大麻草あるいは大麻関連製品に含まれるTHCであったとしても麻向法の下で厳正な規制・罰則の適用を行えることとなりました。

2.大麻等の施用罪の適用等に係る規定の整備

【大麻取締法、麻薬及び向精神薬取締法】

 大麻等の不正な施用についても、他の規制薬物と同様に、麻向法における「麻薬」として禁止規定及び罰則(施用罪)を適用する。

(※)大麻の不正な所持、譲渡、譲受、輸入等についても、麻向法における規制・罰則を適用(現行は大麻取締法で同様の規制有)

 

【解説】

若年層における大麻乱用が年々増加していることもあり、他の規制薬物と同様に使用罪を設けることで、大麻を吸ったら(使用したら)違法であることを明確にし、大麻犯罪の撲滅に向けた法律改正となっています。

保健衛生上の危害発生防止のため、大麻草由来製品に微量に残留するTHCの残留限度値を設けることとする。また、大麻草由来の成分のうち、化学的変化により容易に麻薬を生じ得る一部の成分について麻薬とみなすこととする。

【解説】

現在の法律では、大麻は特定の部位(葉、花、花穂、根、未成熟な茎)を違法とする規制がなされています。これは、カンナビノイド成分はそれらの部位に多く存在し、その他の部位には少量しか存在しない、ということを前提にしています。しかしながら、茎から効率的にカンナビノイド成分(違法ではないもの)を抽出するのはコスト的に無理があることが背景にあり、成熟した茎または種子から採取した(と主張する)原料や製品にも関わらずTHC等の禁止物質が含まれる事例が起きてきました。また、CBDと構造が非常に類似していて完全分離が容易でないTHCの濃度を完全に0(ゼロ)にしなければならないことの技術的ハードルは、分析法の感度をどのくらいまで下げれば良いかがわからないという問題と相俟って、我が国におけるCBD市場の拡大を阻害する要因にもなってきました。

今回の法律改正では、THCなどの麻薬成分の規制を麻向法へ移行して規制を徹底する一方で、『麻薬成分ではない大麻草由来製品(CBDなど)』においては部位規制を撤廃して輸入障壁を緩和することとなりました。その結果として、原料および最終製品に含まれるTHCの残留限度値(基準値)をそれぞれ設ける、いわゆる成分規制に移行することとなりました。そのような基準が設けられることで、CBD製品の輸入・販売に対するリスクや不透明感が軽減されて、上場企業なども参入がしやすくなると考えられます。同時に、日本国内で行うCBD製品の製造や販売に関しては、THC残留値の測定を原料・製品ともに日本国内の分析機関にて行うことが重要となります。THC残留濃度の上限基準値や国内検査機関などについては、追って公表されることとなっています。

 

 

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